オーダーメイドで財布を仕立てる際、私は必ず「普段、何枚のカードを、どのように持ち歩かれますか?」と伺います。
それは単にポケットの数を決めるための作業ではありません。その方の日常の「手の動き」や、ビジネスにおける「優先順位」を整理するための、大切な対話です。
面白いことに、財布のスロットに何を置くかには、その方の個性が如実に現れます。
■ 覚悟を刻む「一番上のスロット」
例えば、普段はほとんど使う機会がないものの、手に取るだけで背筋が伸びるようなステータスのある一枚を、あえて一番目立つ場所に置いている方がいます。
それは他人に誇示するための見栄というよりも、財布を開くたびに「自分は今、この場所で、この役割を担って戦っている」という意識を、自分自身に静かに刻み込むための一つの「儀式」のようなものかもしれません。
■ 負を遠ざける「聖域」の設計
一方で、免許証や保険証、あるいは馴染みの病院の診察券といったカードは、決まって「別枠」や「奥のポケット」に居場所が作られます。
これらは日々の活動に不可欠なものですが、同時に、進んで提示したいものでもないですし。 免許証を取り出すのは、不本意な交通違反の時か、役所の窓口で個人を「管理」される時。診察券を差し出すのは、体が弱り、病院の門を叩く時。
それらは、いわば自分の「自由」や「活力」が制限される瞬間の象徴です。だからこそ、攻めの姿勢で仕事を動かす日常においては、視界に入らない場所へ追いやっておきたい。そんな「負の事態を遠ざけたい」という切実な心理を受け止める場所もまた、財布という道具には必要なのだと考えます。
■ 時代とともに変わる「最適解」
今ではスマホでのタッチ決済が増えてきているからこそ、財布の役割もまた、大きく変化しています。
しかし、その「最適解」は驚くほど様々です。 キャッシュレスに振り切り「カードだけ」という潔い設計を求める方もいれば、常に「ピン札で200枚」を忍ばせ、商売の現場での機動力を重んじる方もいる。 日々の実務で積み重なった領収書の束を、一時的に受け止めるための十分なキャパシティを求める方もいれば、小銭を一切排除し、鍵とカードだけをスマートにまとめたいという方もいる。
それらは単なる好みの問題ではなく、その方が日々どのような現場で、どのような相手と向き合っているかという、ビジネスの「戦闘スタイル」そのものですよね。
手癖を邪魔しないという「所作」
私が設計において大切にしているのは、その方の「手癖」を邪魔しないことです。
淀みなくカードを取り出し、スマートに支払いを済ませて、次の目的地へと向かう。その一連の動作に「迷い」を生ませないこと。
財布という道具の良し悪しは、高級な革を使っているかどうか以上に、その方の「仕事のリズム」にどれだけ寄り添い、美しい「所作」を支えられているかで決まるのだと考えています。
装いも、財布も、時計も。 すべては、最前線で淀みなく戦い続けるための大切な「装備」なのだと思います。
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