カップ麺がおしえてくれたこと

「最近、ネットで『ペヤリタン』っていうのが話題らしいですよ」

お客様とのそんな何気ない会話から、その場の空気が動きました。 「やきそばか?なんやろ。面白そうですね。じゃあ、すぐ近くにコンビニがあるので、ちょっと見に行ってみましょうか」

事務所を飛び出し、お客様と一緒にコンビニの棚を覗き込む。 そんな風に、お客様と同じ目線で日常の何気ないものに触れる時間は、私にとっては大切な「発見」になります。

閉ざされた情報の壁

しかし、そこで私はある「壁」にぶつかりました。 棚のどこにも、価格が表示されていなかったのです。

話題になっていることは知っているけど、味もわからないし。いざレジへ持っていこうとする瞬間に、一瞬のブレーキがかかりました。

「これは、一体いくらなんだろう?」

通常のペヤングと同じなのか、それとも倍くらいするのか。その「前提条件」が伏せられているだけで、購買のハードルは驚くほど高くなる。結局、会計を済ませるまで、それが「100円の差」であることすら分かりませんでした。

この時感じたのは、100円への躊躇というより、「情報の欠如が、せっかくの価値を届く手前で殺してしまっている」という、猛烈な「勿体なさ」でした。

「プライス」は不自由か、誠実か

ネットやオーダーの世界では、「価格を出すと安っぽく見える」「他社と比較される」とサプライヤー側は考えがちです。取引先の方々とも、そのような競争の中での悩みをお話しすることがよくあります。

しかし、お客様の視点に立てば、価格が不明なことは「自分にとって自然かどうか」を判断する上での大きな「負担(ノイズ)」になります。 比較されることを恐れて情報を伏せるのではなく、価格を提示した上で、それ以上の「納得感」をどこで構築するか。それが誠実さではないか。

コンビニの棚の前で立ち止まったあの数秒間は、私にそのことを改めて気づかせてくれました。

すべては、立ち止まるところから始まる

――「良いモノ」の前に、考えるべきこと

いくらかかるのか。本当に必要なのか。自分に相応しいのか。 お客様が抱くこうした「小さな違和感」を置き去りにしたまま、ただ「良いモノですよ」と形にすることは、あまりに勿体ない。

では、どうすればお客様の不安を「納得」に変え、その方にとって本当に自然な装備を提案できるのか。

コンビニの棚の前で気づかされたその問いに、私はまず「何を作るか」ではなく、「何が引っかかっているのか」を言葉にする時間を大切にしたいと思うようになりました。

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