社会保険料という見えないコストの狭間で

先日、後輩から「ノルマを達成したのに、昇給が月5,000円だった」という相談を受けました。正直、今の物価高を考えると、彼が「自分の価値はこの程度なのか」と肩を落とす気持ちも痛いほど分かります。

一方で、経営に携わる方々の声を聞くと、また別の切実な景色が見えてきます。

社員の給料を5,000円上げるということは、会社にとっては単に5,000円を払うことではないんです。そこには社会保険料の会社負担分や雇用保険など、目に見えないコストが重く重くのしかかります。一度上げた基本給を下げることは容易ではなく、不透明な不況のリスクを抱える中、経営者は常に「固定費増」という決断の重みと戦っておられます。

今の時代、こうした「働く側の期待」と「経営側の現実」のあいだに、埋めがたい溝が生まれやすくなっているのも確かです。

特にモノづくりの現場では、原材料費の高騰や協力会社との取引構造の制約など、個人の努力だけではどうにもならない利益率の限界もあります。営業が必死に数字を作っても、それがそのまま給与に直結しにくい構造的な課題が、今の日本には厳然として存在します。

後輩に伝えたのは、「実績は、決してその5,000円という数字だけで測れるものじゃない」ということです。

営業として数字を作ったという事実は、彼自身の血肉となり、どこへ行っても通用する「ポータブルなスキル」として残ります。会社側もまた、こうしたエース級の若手の熱量にどう対峙するか、給与以外の評価軸や対話を含めて、新しい形を模索しなければならない時期に来ているのだと感じます。

「会社が悪い」わけでも「本人の努力が足りない」わけでもない。 ただ、お互いの持っている「ものさし」が少しずつズレてきている。

そんな今の時代のキャリアの難しさを、後輩の寂しげな声を聞きながら改めて考えさせられました。

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