先日、東京へ栄転されるお客様から、
「美味しいご飯屋さんを教えてください」
と聞かれました。
迷いなくお伝えしたのは、
うなぎ、蕎麦、そして寿司。
いわゆる王道の江戸前です。
特にお寿司屋さんは、
「ここです」と即答できる一軒をお伝えしました。
仕事柄、美味しい店を聞かれることは少なくありませんが、
東京でこの三つを外すことは、まずありません。
そのやり取りのあと、ふと思いました。
でも、毎日その寿司を食べたいか?
と聞かれたら、答えは「いいえ」です。
毎日、高級寿司は食べたいか?
職人が天塩にかけて握る寿司は、確かに別格です。
ネタの仕込み、シャリの温度、握りの強さ、提供の間。
すべてが計算され尽くした一貫には、料理を超えた完成度があります。
けれど、日常として考えると、少し重たい。
一方、回転寿司には、回転寿司の良さがあります。
速さ、手軽さ、価格、安心感。
肩肘張らず、気負わず、
「今日は寿司にしようか」と思える日常性。
これは決して「質に妥協している」わけではなく、
日常に最適化された質だと感じます。
スーツも、まったく同じ
私の場合、この感覚は、スーツ選びにもそのまま当てはまります。
最高級の生地を使い、
熟練職人が時間をかけて仕立てた一着。
それは間違いなく素晴らしい。
しかし、毎日それを着たいかと問われれば、
やはり答えは「いいえ」になります。
日常で本当に必要なのは、
高級さではなく、ちょうど良い質。
・仕事に耐える
・清潔感がある
・動きやすい
・気負わず着られる
・しかし、安っぽくは見えない
このバランスこそが、
毎日袖を通したくなるスーツの条件だと思っています。
「質に妥協する」の本当の意味
質に妥協するとは、
安いものを選ぶことでも、
楽なほうへ流れることでもなく、
生活に合わない「過剰な質」を削ぎ落とすこと。
贅沢を否定するのではなく、
日常に必要な分だけを、正確に選びたいなと思います。
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