2016年、無駄を捨てる決意
2016年。イタリアのピッティウオモをはじめ、ミカム・ミペル、ミラノ・ウニカ、イデアビエラ、それからフランスのプルミエール・ヴィジョンといった海外の展示会を巡りながら、当時のわたしはそこに並ぶ、大方予想できるモデルやトレンドカラー、素材を追いかけることに心底飽き飽きとしていました。
一年先のトレンドを追い、触れ、オーダーする。けれど、そこにあるのはオセロの駒をひっくり返すような表面的な変化だけで、先を見たところで、自分の中に何も残らない感覚。仕入れを起こせば、否応なしに発生する高額な関税と送料。箱の中身よりも、それを運ぶための経費に価値を奪われているような、ばかばかしさ。下手な英語を使い、こちらの感性と噛み合わない交渉を続けることにも、どこか違和感を抱いていました。
「この無駄と思えることすべて、目の前のお客さんの要望に応えるための『こだわり』に変えられないかな……。」
ある日曜日の接客を終えたその足で、わたしは新幹線に飛び乗りました。奮発して乗ったグリーン車で食べた、カチカチのアイスで差し歯が割れたこと。夜からセットしてもらった大切な商談。あるルートで奮発して予約した芸能人御用達の寿司屋。板場越しに交わした対話。流行という名の消費を捨て、日本人の手で、日本人のための「基準」を自ら創り出す。そんな夜から静かに動き始めました。
人が主役となる、血の通ったリズム
マシンメイドの靴から聞こえるのは、効率を優先した、誰のものでもない無機質な機械音です。しかし、わたしたちがこの場所で行っているのは、決められた工程を無心にこなすだけの「作業」ではありません。
目の前の一足に対し、どうすればより格好良く仕上がるか。常に知恵を絞り、思考を止めずに形にしていく。人が主役となり、機械を自分の手足のように使いこなすハンドメイドのリズム。そこにあるのは、一刻一刻が真剣勝負の「創造」です。
指先が捉える、一瞬の対話
革を引く強さ、針を落とす角度。夏には高温で分離を始めるワックスの粘りを見極める。底材を染める際、インクがどこまで出し縫い糸を染め上げるか。その一瞬の「染まり具合」すらも、手の感覚でコントロールする。その一つひとつにわたしたちの意志が入り込むことで、靴は単なる製品から、その人の歩幅を支える「基準」へと変わります。
日本人の身体感覚を「定着」させる
そこには、日本人の感覚が静かに、しかし確かに息づいています。 雨上がりの湿り気を帯びた空気のなかで、革の伸びやインクの染み込みがどう変化するか。また、職人さん達はわたしがお願いしている仕事だけではないので、他社さんとの生産具合の様子を伺いながら調整を進め、冬の雪に濡れた道を経て、完璧な状態で店主の手元へ届くために、何を尽くすべきか。そして、和室の静寂で靴を脱ぎ、また履くという、特有の所作のなかで、踵の曲線がどうあるべきか。
時代を超えても「普通に格好良い」ということ
目指したのは、セントジェームスのような「センチュリーベーシック」である不屈の定番。フレンチテイストで少しノーブルでありながら、デイリーに、がしがし着用できるみたいな。主張し過ぎず、世代を越えても流行り廃りの無い、普通に格好良い姿。
そして、マシンメイドの音では決して捉えきれない、日本人の身体感覚や、日常に溶け込んでいる微細なリズムを、ひとつずつハンドメイドの中で定着させていく。
メトロノームが刻むのは、完成された一曲ではありません。日本人の足取りを最も静かに支えるための、揺るぎない確信。流行に左右されない定番としての誇り。それこそが、2016年のあの日曜日の夜から変わることのない、Maestro Japanのプライドです。
📸 Official Instagram maestro.japan/
📝 The Pride of Made in Japan【オーダーシューズ】|note note.com/ordershoes
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