本記事は、Piccolo Kyotoとお取引のある職人様やパートナー様、および新規で協業の導入をご検討中の皆様に向けて綴っています。
お客様へご提案をする際、私たちはさまざまな言葉を使います。
たとえば、
「この木型はノーズが長く、ウエストを絞ったクラシックラストです」
「この生地はスーパー150’sの高品質ウールで、ドレープ性に優れています」
どちらも、間違いのない説明です。
しかし正直なところ、少し伝わりにくいこともあります。
そこで登場するのが、
「シュッ」
「とろっ」
「ガシッ」
といったような感覚的な言葉です。
「シュッ」とした木型
鏡の前に立った瞬間、
「なんだか姿勢が良く見える」
「全体が引き締まって見える」
そんな感覚を、一言で表すなら
「シュッとしている」
これ以上でも、これ以下でもありません。
専門用語では説明できても、
一瞬でイメージが浮かぶとは限りません。
けれど「シュッ」という言葉には、
細さ、端正さ、洗練された印象まで、
不思議とすべてが含まれています。
「とろっ」とした生地
ゼニアのトロフェオのような高品質な生地に触れたとき、
指先がすべるように動き、
重みがありながら、柔らかい。
その感覚を、長い説明で語ることもできます。
けれど実際には、
「これは、とろっとしていますね」
そうお伝えした瞬間、
多くのお客様が納得されます。
理屈ではなく、
体験を共有できる言葉だからです。
「ガシッ」とした生地
一方で、ゼニアのアイランドフリースのような丈夫さや頼もしさを表したいとき。
「耐久性が高く、織りが密で、しっかりした質感です」
もちろん正しい表現ですが、
現場では、こう言うこともあります。
「これは、ガシッとしています」
すると、
長く使えること
型崩れしにくいこと
安心感があること
そうした意味が、自然に伝わります。
専門用語は正確。
しかし、伝わるとは限らない。
私たちの仕事は、
正しい言葉を知ることでもあります。
けれど同時に、
お客様と同じ感覚を共有することでもあります。
どれほど正確でも、
相手の頭の中に映像が浮かばなければ、
その説明は届いていないのかもしれません。
素材の良さ
仕立ての技術
設計の工夫
それらを、
専門家だけが理解できる言葉で語るのではなく、
お客様の感覚に置き換えて伝える。
難しい言葉を並べることではなく、
目の前の一着の魅力を、
その方の言葉に変えてお届けすること。
それが、私たちの仕事の本質なのかもしれませんね。
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