お客様に満足してもらう一足を届けるために。私が「売らない」選択をする理由

Piccolo Kyotoとお取引のあるテーラー様、専門店様への共有としてまとめました。

「足の数値を測ったので、サイズを教えてほしい」 卸先様からこのご相談をいただくことは、決して少なくありません。

しかし残念ながら、その数値(いわゆるヌード寸法)だけを根拠に、私がサイズを断定することは出来ません。

20年以上この業界に身を置き、数え切れないほどの足を拝見し、靴を仕立ててきました。その経験から、ある結論に辿り着いています。

「数値」という点の情報と、「靴」という立体構造を、想像だけで完全に一致させることには限界がある——という事実です。

数値化できない「3つの変数」がフィッティングを左右する

プロとして計測をしてくださる方ほど、ぜひ知っていただきたい現実があります。それは、フィッティングの成否を左右する要素の多くが、そもそも数値化できないということです。

1.靴の構造によるホールド感の違い

木型が変わればサイズ感も変わります。そして、紐靴(レースアップ)と、紐のない靴(例えば、モンクストラップやローファー)では、同じ木型のサイズであっても、フィット感の性質は大きく異なります。

普段「紐靴を緩めに履く癖」がある方が、その感覚のまま紐なしの靴を選べば、結果はほぼ確実に「緩い」ものになります。これは足の数値の問題ではなく、構造と着用習慣の問題です。

たとえば、スーツの採寸において、ウエイト感のある重厚な生地と、シルクのように繊細な生地とでは、サイズ感も補正内容も変えるのがプロの常識です。靴というプロダクトにおいても、それと全く同じ論理が働いています。

2.一人ひとり異なる「履き癖」と「嗜好」

足の形状だけでなく、以下の要素を確認せずにプロが「正解」を導くことは出来ません。

  • 歩き方、体重移動の癖
  • タイトなフィットを好むか、余裕を求めるか(ヒアリングの徹底)

こうした主観的でありながら、無視できない要素を飛ばしてサイズを決める行為は、ビジネスとして合理的とは言えないのです。

3.計測データそのものの不確実性

そもそも、足の計測位置は極めて曖昧です。プロが測ったとしても、誤差は必ず生じます。測る場所さえ完全に定まらないデータを絶対視し、責任ある判断を下すことは出来ない。これは経験論ではなく、構造的な事実です。

ゲージ(サイズ見本)を揃えることは、成功への「最短ルート」

これは決して、卸先様に過剰な負担を強いるための仕組みではありません。 インポートシューズのように、過酷なミニマムロットを課しているわけでもありません。

どうすればパートナー様が

  • 最小限の費用と時間で
  • 最大限の成功確率を確保できるか

20年以上考え続けた末に辿り着いた、最も合理的な仕組みが「まずゲージを揃える」というプロセスなのです。

ゲージを確認せずに発注することは、お客様に不確実な選択を強いることになります。不確かな数値をもとに推測でサイズを決めることは、プロの仕事として「リスク管理」ができていない状態だと私は考えています。

結論:プロとして「売らない」という選択

私は、フィッティングを確認したうえで「これは難しい」と判断した場合、販売いたしません。適合しないと分かっていながら販売し、後からサイズ交換や微調整を繰り返す。その手戻りの時間と労力こそが、お互いにとって最大の損失だと考えるからです。

「何とかしてあげたい」という気持ちは、もちろんあります。しかし、不確かなデータをもとに中途半端な回答をすることは、結果的にお客様の利益にならず、ひいては卸先様の信頼をも損なうことになります。

ですから、私はやりません。

まずはゲージで、現物の「物理」を確認してください

少し厳しい物言いに聞こえるかもしれませんが、あえて申し上げます。

まずはゲージで、現物の「物理」を確認してください。お話は、それからです。

準備を怠った結果、サイズが合わないという事態を招き、それを供給側の責任とされるのは、プロの商売として健全ではありません。道具を揃えるという最小限の投資を惜しみ、リスク管理を疎かにする店に、お客様の人生を支える一足を提案する資格はない。20年、現場の真実に立ち会ってきた私はそう考えています。

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📩 お問い合わせ・業務相談

Maestro Japanでは、貴店のラインナップを補完し、共に価値を高めていける最良のパートナーでありたいと考えています。

最高のスーツを仕立てた後、その足元を支える「確信の持てる一足」。 お取引先様が現場で汲み取ったお客様の声を、私が職人の技術へと繋ぎ、装いの完成を足元で完結させる。貴店が仕立てる一着の価値を、その足元の確かな仕立てによって、揺るぎないものにしてください。

なお、ブランドの価値および既存パートナーの商圏を保護する観点から、私たちは供給先を限定しております。 以下の項目に基づき、お取引の可否を慎重に判断させていただきます。

長期的なパートナーシップ(一過性ではない継続的な信頼関係)

カニバリゼーション(既存パートナーとの商圏重複の回避)

コンセプト・マッチング(世界観や相性)

フィッティング品質の担保(技術力)

供給能力の適正化(キャパシティを優先した納期・品質の維持)

「まずは、貴店の想いをお聞かせください。」

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