私の足裏には、5年間、頑固な魚の目が居座り続けていました。
理由は、明確なのです。
太ったことにより、昔から集め続けてきた革靴のサイズが変わってしまった。
それにもかかわらず、「まだ履ける」と無理に履き続けていたこと。
原因は、外ではなく、自分の中にありました。
靴屋として、お恥ずかしい話です。
しかし同時に、だからこそお伝えできることがあるとも思っています。
「切る」のが当たり前だった5年間
この5年間、傍らには常に専用のはさみがありました。 歩行時に違和感を覚えれば、手慣れた手つきで硬くなった角質をサッと切り落とす。爪を整えるのと変わらない、悲しいかな日常のルーティン。
切ればその場は凌げる。だが数日経てば、またそこは岩のように硬く盛り上がり、一歩踏み出すたびに私を突き刺してくる。なぜこの一点の悩みだけが解決しないのか。答えの出ないまま、私は5年間、自分の足裏と向き合い続けてきました。
革靴にインソールという「小細工」は使いたくない
世の中には足のトラブルを解決する多種多様なグッズがある。だが、私は革靴に市販のインソールなどの「小細工」で調整するのがどうしても好きになれませんでした。
靴は、オリジナルの状態で履くのが一番だと思っています。応急処置的に市販の中敷きを足して場当たり的に誤魔化すのは嫌だというこだわりがありました。
そこで、そのこだわりを別の形に変え、ある極端な試みを始めました。 「半年間、大好きな革靴を脱ぎ、クッション性の高い厚底スニーカーだけで過ごす」
アッパー: 圧倒的な通気性を確保するメッシュ素材。
インソール: 柔軟性の高いポリウレタン素材。
ソール: 合成樹脂とゴムの混合物。
これは発泡系素材ゆえに、いつかは加水分解を起こすし、摩耗も早い。いわば「消耗品」
正直に言えば、これには強い抵抗がありました。 スラックスの足元にランニングシューズを合わせる。陸上競技の審判員の様で、それは、自分の美学からすれば「いかにもダサいおじさん」という風体で、避けたかったスタイルでした。
しかし、5年続くこの「石」を消し去るには、これまでの自分のこだわりを一度捨て、足裏の環境を根本から変えるしかありませんでした。
なぜ、スニーカーで完治したのか
結果は、自分でも驚くほど劇的。半年後、あんなに頑固だった魚の目が跡形もなく消え去った。そこには明確な理由があります。
- 物理的な「点」の刺激を排除できた 魚の目は、皮膚が「攻撃されている」と勘違いして作る防壁。革靴の硬い圧迫をスニーカーのクッションに変えたことで、角質を硬化させる原因となる刺激をシャットアウトできました。
- 血行が戻り、皮膚が息を吹き返したこと 革靴の圧迫は、知らず知らずのうちにその部分の血流を妨げていた。圧迫から解放されたことで、足裏全体の血行が良くなり、自浄作用(ターンオーバー)によって異物が自然と排出された。
- 「蒸れ」から解放されたこと 通気性に優れたスニーカーは、足裏の湿度を適切に保つ。過度な蒸れや摩擦から解放されたことで、皮膚本来の健やかさが戻ってきました。
二度と繰り返さないための予防法
5年間のはさみ生活に戻らないために、私が実践しているポイントは4つです。
- 靴の履き分け 毎日革靴を履かず、クッション性の高いスニーカーを挟んで足裏への圧迫をリセットする。
- 血流を止めない 夕方のむくみなどで足が圧迫されすぎないよう、紐を適切に調整する。お風呂上がりに足裏を動かすセルフケアも有効。
- 天然素材の靴下と「休ませる」習慣 吸湿性の良い綿やウールを選び、皮膚をふやかさない。履いた靴はしっかり休ませて乾燥させ、革が硬くなるのを防ぐ。
- 歩き方の意識 特定の場所に体重を乗せすぎず、足裏全体で着地して蹴り出す「ローリング歩行」で摩擦を分散させる。
失敗談から、予防において最も大切なのは、「違和感を無視しないこと」です。「あ、少し硬くなってきたかな?」と感じた時点で、その靴を一旦休ませ、刺激の少ない靴に切り替える。自分の足の声を聞き、適切な環境を差し出す。結局は、これに尽きると思います。
