型を知る

本記事は、Piccolo Kyotoとお取引のあるテーラー様・専門店様、および新規でオーダーシューズシステムの導入をご検討中のオーナー様に向けたメッセージです。

自信過剰だった大学生が直面した「型」

30年ほど前、大学生だった私は、ユナイテッドアローズ(UA)でアルバイトをしていました。 高校時代はヴィンテージショップ、大学2年生からは吉田カバン(PORTER)でもアルバイトしており、留学から帰ってきた当時の私は接客にも商品知識にも自信を持っていました。今振り返ると、その根拠のない自信過剰さにゾッとするほどです。

そんな鼻持ちならない若造だった私に、採用面接で店長が言い放ったのは「髪を切れ」という一言でした。 当時は空前のロン毛ブームでしたが、私は迷わず坊主にしました。今でも東京出張の際にお会いしに行く(最近はご無沙汰しておりますが)、尊敬する恩師からの最初の教えでした。

しかし、坊主頭で挑んだ先に待っていたのは、夢見ていた華やかな接客……ではなく、ストックルームでの果てしない「整理整頓」の日々でした。

「商品の顔」が死んでいる

当時はもちろん、最年少で一番の下っ端。売り場に立つことすら許されず、日の当たらないバックヤードでひたすら段ボールと向き合う毎日。ですが、今振り返れば、あの場所こそが今の自分において最も大切なことを教えてくれる最高の環境でした。

ストック整理一つとっても、そこには厳格な「社会」と「型」がありました。 若さゆえに「何を偉そうに……」と反発心を感じることもありましたが、自分なりに綺麗に並べたつもりでも、先輩からは烈火のごとく怒鳴られました。今考えると、入ったばかりの若造が、自分なりのアレンジだなんてクソ生意気なこと10年早いわという話です。

「これじゃあ、次に商品を取り出すスタッフが迷うだろう」 「商品の顔が死んでいる」 「字が汚い」

そこにあったのは、単なる在庫管理ではありませんでした。

  • 空間への敬意
  • 次に繋げるプロのバトンタッチ
  • お客様に見えない場所こそ美しく保つという矜持
  • 何より、誰にも邪魔されず商品そのものを深く研究できる時間

怒られながら身体に叩き込まれたその「型」は、30年経った今も、私の仕事の根幹として深く根付いています。

現場の疲弊と、失われゆく「教育の時間」

しかし、現代のアパレル現場はどうでしょうか。 ECとの併用、複雑化する物流、そして深刻な人手不足。今の若手スタッフは、かつての私たちが「怒られるほど濃密に」型を教わったような時間を、物理的に奪われているように感じます。

日々の事務作業や、非効率な在庫管理に追われ、本来向き合うべき「商品」や「型」を学ぶ余裕を失っているのではないでしょうか。ストックルーム(営業倉庫)が単なる「作業場」になっていないでしょうか。

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