「良い靴」の定義。これは、確実に時代と共に変化していると思います。
かつては、パリやロンドンの老舗のロゴが刻まれていること自体が、「良い靴」の証とされてきました。
わたしは、インポートシューズのバイイングを通じて数千足以上の靴に触れ、何百足もの靴を履き、そして何千足ものお客様の靴を磨いてきました――その経験の積み重ねが、今の仕事の原点となっています。
しかし近年、多くのテーラーや靴愛好家の方々、そしてお客様のお話を伺う中で、その“当たり前”に対して、静かな疑問が広がり始めているように感じています。
いまや、InstagramやYouTubeを通じて、日本のビスポーク職人さんたちが、自らの作品や製作工程を直接発信できる時代となりました。
その中で明らかになってきたのは、欧州の伝統的な木型(ラスト)が、必ずしも日本人特有の繊細で複雑な足型や、高温多湿な気候、そして硬質なアスファルト路面といった生活環境に最適化されているわけではない、という事実です。
「夕方になると感じる足の疲れ」や「土踏まずに生じるわずかな空隙」に、どこかで折り合いをつけているとしたら。
貴店がお客様の体型に合わせて丹念に仕立てた「最上の一着」に対し、その靴が真に釣り合っているのか──
ふと疑問を抱かれたことがあるのなら、一度ご覧になってみてくださいませ。
フォルマ(形)は「装飾」ではなく「力学」
Maestro Japanの靴を象徴する造形──
The Missing “J”(エッグトゥ)。
それは、単なる意匠や一過性の流行ではありません。
日本人の足に多く見られる「親指の立ち上がり」を受け止め、指先に適切な自由度を確保すること。
同時に、甲から踵にかけては的確にロックし、歩行時のブレを抑えること。
フォルマとは視覚のための装飾ではなく、
荷重分散・推進効率・安定性といった要素を最適化するための「力学的設計」だと考えています。
美しさは、その結果として現れるもの。
意図して飾るものではなく、機能が整った先に宿るものだと考えています。






モデル名に冠した「ホールカット」や「ウィングチップ」という名称も、私たちにとっては「手段」に過ぎません。 縫い目を持たない一枚革で足を包む(ホールカット)のは、摩擦を排除し、第二の皮膚を作るため。重厚なメダリオン(ウィングチップ)は、歩行時の革の屈曲を最適に逃がし、美しさを永続させるための設計です。
「パートナーシップ」について
私たちが供給先をあえて限定し、「パートナーシップ」という言葉を重んじるのには、明確な理由があります。
靴は、工房を出た瞬間が完成ではありません。
オーナーの足に馴染み、革が呼吸し、修理を重ねながら、10年という歳月をかけて完成へと近づいていくものです。
その長い時間軸のすべてに責任を持つこと。
それこそが、私たちの考える“ものづくり”です。
ゆえに私は、「小売店とメーカー」という機能的な関係に留まることなく、
貴店と志を共有しながら、お客様一人ひとりの歩みに寄り添う存在でありたいと考えています。
言い換えるならば、
共にお客様の人生を支える「足元の伴走者」でありたい、ということです。
その思想を実務として具現化するために、
フィッティングにおけるリスクを最小化する仕組みとして「Jump bar」を採用しております。
これにより、お取引先様が安心してご提案いただけるバリエーションを広げてもらいたいと考えております。
